スズキのレトロスクーター、ヴェルデ。
2ストのスクーターでもう古いと言えば古い車両です。
走っていたら急にエンジンが止まって、そのあと全くエンジンがかからなくなったとの事。
セルでエンジンをかけようとしても、スターターリレーの”カチッ”という音はするけどそれ以外は無反応。
キックでエンジンをかけようとして、キックを踏み込んでも全くキックが降りない。
う~ん、この状況だけで考えるとエンジンがやばそうな気が、、、重度の焼付き???
とりあえずまずは基本中の基本で点火プラグのチェック。
点火プラグを外してみると、電極は思ったほど白くない。
混合気が薄くて焼付いた場合だと、電極はもっともっと白くなっている事が多いけど全然白くない。
しかし汚れはかなりヒドイですね。
何にしても点火プラグは新品交換です。
点火プラグを外した状態で一応キックしてみたけどやはりキックできず。
お次はエアクリーナーのチェック。
エアクリーナーが原因だとしたら、、、
1.スポンジ状のフィルターが経年劣化等で崩れて必要以上の空気が吸い込めるようになって混合気が薄くなっての焼き付き
ただこの場合、点火プラグがもっと白っぽくなっててもいいようなものなのでちょっと可能性は低いかな。
2.崩れたフィルターがエンジンの燃焼室等に吸い込まれての異物混入による焼き付き
ただこれも、経験上 崩れたフィルターのせいでピストンやシリンダーに傷が入ったケースは見たことがないので可能性はかなり低い。
3.そもそもフィルターが入っていない
ごくごく稀にエアクリーナーケース内にフィルターが入っていない車両があります、本当です。
って言っても本当にごくごく稀で、自分も今まで2~3台くらいしかお目にかかったことがありません。
オーナーが自分で外したか、もしくは中古車で買ったバイクでもともと入っていなかったか。
この場合、1.と同様の原因で焼付くので、同様に可能性は低い。
と、まぁ可能性は低いところなのですが、簡単に診れるところは先に診ておかないと、あとでここが原因だったなんてなったら目も当てられないので。
ヴェルデはそのデザインのおかげでエアクリーナーケースのカバーが簡単には外せません。
なので、とりあえず隙間からチェック。
フィルターはしっかり入っていました。
そして見たところ崩れもなし。
直接触ってみても崩れる気配もなし。
という事でエアクリーナーも問題なし。
さていよいよシリンダー内を覗いてみます。
2ストなのでマフラーを外すとそこから簡易的にシリンダー内を見ることができます。
早速マフラーを取外します。
マフラーを固定しているボルトたちを外して、
マフラーを取り外すと、
排気ポートがお目見え。
そして、
これを使って排気ポート内を覗きます。
こんな感じで。
細かい傷はありそうだけど致命的な傷は見えない。
本当はキックペダルを動かしてピストン位置をいろいろ変えて見てみたいところだけど、動かないのでしょうがない。
とりあえず見た感じ焼き付きではないのか???
となると、、、
実は薄っすらもう一つの原因の可能性も考えていたけどそれかな?
というのは駆動系の問題。
ドライブベルト切れ。
ただ、セルもキックも全然動かなくてクランキングが全くできない状態だったから、焼き付きの方が可能性がよっぽど高いと思っていたんだけど。
これもけっこう稀で、ベルトが切れてどこかに噛み込んで全くクランキングできなくなるケースもないことはないんですよね。
という訳で今度は駆動系の点検。
キックペダルを外して、
ケースカバーのカバーを取り外す。
おお~!
見事にベルト切れ。
ケースカバーも取り外し。
盛大にベルト切れ。
ドライブ側・ドリブン側ともけっこう噛み込んでいる。
とにかく切れたベルトを取り除く。
そしてケースカバーとキックペダルを仮組み。
そしてイグニッションキーをONにしてキック。
かかった!
原因はベルト切れ。
そうと分かれば駆動系のOH。
駆動系分解。
ドライブプーリー内はと言うと、
ウェイトローラーはけっこう摩耗しています。
ウェイトローラーとスライダーは交換。
ドリブン側はというとトルクカムの動きがあやしいのでこちらも分解。
トルクカムの状態を見る為、更に分解。
トルクカムの溝に段が付いています。
これだけだったらまだ良いんだけど、ピンもグラグラ。
それなので今回はこの溝のある部品(ムーバブルドリブン)とピンを交換。
そしてちょっとした部品のクラッチスプリングも、この先いつ折れるか分からないので交換。
そして組み付け。
もちろん各工程で掃除しています。
組み付け完了。
改めてエンジン始動。
セルでもキックでもあっさりエンジン始動。
走りもバッチリ問題なしで修理完了。
いや~、焼き付きじゃなくてよかった。