スタータースイッチでエンジンがかからない車両の2台目。
キムコのバイク。
キムコは台湾のメーカーですが正直なところあまり詳しくありません。
このバイク、デザインはかっこいいなと思ったのですが車体に名前が書いていなかったのでバイクの名前すら分かりませんでした。
あとでお客さんに聞いて”VJR125”という名前だという事を知りました。
そしてこのバイクもスタータースイッチでエンジンがかからないという事で入庫。
ただこのVJR125はキックが付いていない。
つまりエンジンがかけられないという事。
キックがあればとりあえずスタータースイッチが使えなくてもエンジンかけて乗ることはできますが、
これではやはり修理せざるを得ませんね。
今回はスタータースイッチを押すとどこからか”カチッ”という音は聞こえてくる。
この”カチッ”はリレーが作動している音。
つまりスタータースイッチ自体は反応している。
リレー自体かリレーから先が怪しいという事になります。
とりあえずトランクボックスを外してみます。
バッテリーの後ろの方を見ると、
ありました。
奥に写っているのがスターターリレー。
スタータースイッチを押してテスターを当ててみるときちんと電圧がかかってリレーは正常に作動している。
となるとリレーから先です。
次はスターターモーターを探します。
それっぽいものがあります。
が、エアクリーナーが邪魔な感じ。
なのでエアクリーナーを取外します。
これで見えやすくなりましたがリヤのインナーフェンダーも邪魔なのでこれも取り外します。
スターターモーターがはっきりと姿を現しました。
リレーからくるハーネスのプラス端子。
このハーネスに断線などがないかを調べます。
リレーの出力側とこのスターターモーターのプラス端子にテスターをあてて抵抗値を測定。
抵抗値はごくごく小さく問題なし。
ハーネスを多少手で動かしたりしても抵抗値に変動もないので、
おそらく切れかかったりしているような事もなさそう。
スタータースイッチを押してスターターモーターにかかる電圧を調べてみると、
きっちりとバッテリー電圧がかかっています。
となるとスターターモーター本体が怪しい。
ただエンジンが故障していてロックでもしているような状態だと同じ症状になります。
今回はスターターモーターの脱着がそれほど面倒ではなさそうなので、
このままスターターモーターを先に調べます。
車種によってはスターターモーターの脱着がすごく面倒なものもあるので、
そういった場合には先にエンジンがきちんとクランキングするかを診る場合もあります。
サクッとスターターモーターを取外し。
ここで試しに直接バッテリーに繋げてみたら弱々しくちょっとだけ回って止まりました。
ほぼ間違いなくスターターモーターの故障。
早速分解。
昔、自動車のスターターモーターの設計の仕事をやっていたのでこのへんはどんどん臆さず行けます。
セットボルトを外して、
ヨークを外して、ゆっくりと注意しながらアマチュアを抜きます。
おっ、
片方のブラシが出てきていません。
スターターモーターが回らなかった直接の原因はこれですね。
よくよく見ると、
ブラシが収まっている部分がひどく腐食している。
単なる錆でもなさそうですが、化学変化での腐食でしょうか!?
とりあえずちょっとブラシに触ってみたら簡単にブラシは飛び出してきました。
もっと分解したいところですが、カシメて組み立ててあるのでこれ以上分解できません。
やむを得ずこの状態で可能な限り腐食しているところをキレイにしました。
そしてブラシ先端を面取り。
この状態でブラシを動かしてみましたが、引っかかる事もなくスムーズに動きます。
何度繰り返しても問題なく動くのでこれでOK。
スターターモーターを組み立てて、バッテリーに繋いで作動点検。
バッチリ元気に回るようになりました。
元通りに車体に組付けて、スタータースイッチをON。
あっさりエンジン始動。問題なしです。
プラスのブラシの部分の腐食の原因が気になりますが、
他の部分が腐食していなかったので水分の浸入は考えづらい。
バッテリー端子の腐食とそっくりだったので、おそらく電気的なものが関係している化学変化だと思われます。
もしかしたら以前かなり弱ったバッテリーを使っていた時期があるとか。
何はともあれエンジン本体がロックなどしていなくてよかった。